ご挨拶Welcome to our workshop

ご挨拶

人とつながる・元気になる-「エンパワードSST」への展望を切拓くワークショップ

「人とつながる・元気になる」-これは誰もが願うことです。しかし、時代の変化の中で、人とつながり・元気になるための支援を必要とする人々が、医療はもちろん、教育や司法、就労支援など様々な領域で増え、引きこもりや孤老など社会的孤立の問題が深刻化しています。私たちの住む社会が、暖かい成熟した社会として発展していくためには、支援技術の開発・普及がますます重要となっています。

SST(社会生活技能訓練)はこうした時代の要請を受けて発展してきました。UCLAのリバーマン教授が来日して講演会を開き、わが国でSSTの本格的な普及が始まったのは、1987年(昭和62年)に精神衛生法が精神保健法に改正され、精神障害者の人権擁護や社会復帰・社会参加の促進が初めて法律で謳われた翌年でした。SST普及協会が発足した1995年(平成7年)には障害者基本法の制定を踏まえて「障害者プラン-ノーマライゼーション7カ年戦略」が発表されました。こうした中で、SSTとともに、家族心理教育、包括型地域生活支援(ACT)などのアウトリーチ活動、ケアマネジメントなどがわが国に導入され発展してきました。

わが国へのSSTの本格的導入から30年が経過しました。国の法律として、障害を理由とする差別の解消と合理的配慮を謳う「障害者差別解消法」が2016年(平成28年)から施行され、精神障害者支援の理念として、リカバリー、エンパワメント、SDM(協働的意思決定)などが幅広い人々に支持されるようになり、人の行動における脳機能や認知の重要性が認識され脳科学・認知行動療法が発展しています。しかし、精神科医療は依然として入院中心で地域や職場での支援体制は十分と言えません。

SSTは「希望志向」と言われます。ご本人の意思を尊重し、希望を引き出し、その実現を小さな実現可能なところから一歩一歩、ロールプレイなどの具体的な練習を通じて実現に近づいていくこと、行動上の問題を本人の外から「しつけ」として見るのでなく、本人の側に立って「生きづらさ」ととらえ、一緒に問題の克服を目指すところにSSTの本領があります。

今回のワークショップは、副大会長 池淵恵美先生(帝京大学)、実行委員長 加瀬昭彦先生(横浜舞岡病院)をはじめ、南関東支部会員有志が実行委員として協力し、2017年3月に第1回実行委員会を開いてから、毎月のように実行委員会を開いて準備を進めてきました。今大会のテーマは「みんなで拓こう新しい時代のエンパワードSST」としました。その意図は、上記のようなSSTの本来の優れた点を生かしつつ、本格的導入後30年を経た関連領域の変化を積極的に組み入れ、次の時代のSSTへの発展を目指すことです。

本ワークショップでは、丹羽真一会長講演「e-SSTを目指して」、西園昌久名誉会長講演「「我と汝」とSST」、シンポジウム「SSTは進化する-エンパワードSSTの実際」、ランチョンセミナーとして熊野宏昭先生による「新しい世代の認知行動療法」、平安良雄先生による「統合失調症におけるリカバリーゴールの意義」があります。分科会では、アセスメントや行動分析などのSSTの基本から、子ども支援、就労支援、サイコドラマ、オープンダイアローグ、マインドフルネスなど、新しい流れを汲み入れつつ、皆様の日々の実践をより豊かに活性化するための様々な実践方法の解説・紹介があります。市民公開講座は「人生を生ききる」をテーマにご住職とSST認定講師のコラボレーションを企画しています。

このように、日頃の実践の新しいヒントが得られる、みんなが参加したくなる楽しいプログラムを目指して検討を進めています。皆さんの積極的なご参加をお待ちしています。

第24回 SST全国経験交流ワークショップ in 東京


大会長
安西信雄
帝京平成大学大学院
臨床心理学研究科

副大会長
池淵恵美
帝京大学医学部
精神神経科学講座

実行委員長
加瀬昭彦
横浜舞岡病院